特発性血小板減少性紫斑病(略称ITP)  ( 2005/03/10 )

 特発性血小板減少性紫斑病とは、明らかな元々あった病気や薬剤の関与なく発症し、血小板数が減少するため種々の出血症状をひき起こす病気のことをいいます。 

診断から6ヶ月以内に治癒することの多い「急性型」は小児に多く、6ヶ月以上続く「慢性型」は成人に多いとされています。この病気の患者数は毎年約200名(人口100万人当たり11.6人程度)が新たに発症するとされていますが、私の個人的な経験ではもう少し多いような気がします。

 この病気にかかると公費負担により医療費が無料になります。そういう患者さんが平成14年末で全国に3万人程度いらっしゃいます。男女比は小児では1:1、成人では男女比1:3で、女性に多く発症します。小児では5歳未満がもっとも多く、次いで5〜9歳、成人では20歳代後半と40歳代後半に多いようです。

 病気の原因として自分の血小板を攻撃する「自己抗体」ができ、脾臓で血小板が破壊されるため血小板数が減ってしまいます。自己抗体ができる原因として胃潰瘍の原因であるピロリ菌のためであるとの説が最近言われるようになりました。ピロリ菌をやっつけようとして免疫システムが働いて、間違って自分の血小板を攻撃、破壊してしまうのです。

 症状としては、血小板は出血を止める作用があるので、数が減ると出血し易くなります。例えば、

1.点状や斑状の皮膚にみられる出血(皮下出血・ぶつけた覚えがないのにアザが出来る、など)
2.歯ぐきからの出血・鼻血
3.便に血が混じったり、黒い便が出る
4.尿に血が混じる
5.月経過多
6.脳出血

といったことです。但し、これらの症状を示すのはこの病気ばかりではないので注意が必要です。

 治療は第一に副腎皮質ステロイドにより自己抗体を抑えるのが一般的ですが、原因の一部がピロリ菌と関連することから抗菌薬で除菌(抗生物質の内服治療)をすることで、半数以上の患者さんで血小板数が改善します。薬物療法が無効な場合や、副作用等で治療の継続が困難な時には、手術で脾臓を摘出(摘脾)することもあります。それが無効の時には免疫抑制剤を用いることがあります。ガンマ・グロブリンの点滴も、一過性ながら効果があるので、手術の前や緊急時などに用いられます。

 小児に多くみられる急性型の大部分は自然に治癒し、慢性型に移行するものは10%程度です。慢性型でも約20%は副腎皮質ステロイドで治癒し、さらに摘脾で60〜70%が治癒します。それでも残りの約10〜20%は治療が効果なく出血に対する厳重な注意が必要とされますが、致命的な出血を来して死亡する例はまれなようです。さらに新しいピロリ菌の除菌で今後治癒率が上昇する可能性があると思われます。

 市販のヨーグルトの中にはピロリ菌の数を減らす効果のあるものがありますので、試してみると良いかもしれません。但し、治療をしてくださるお医者様に「こういうものを摂っています」とお伝えくださる方が良いと思います。

 除菌療法をしてピロリ菌が除菌されないひとも血小板数の回復が見られており、この病気の原因がピロリ菌だけではなさそうであると言う事もお伝えしておきたいです。