がん検診について  ( 2004/12/15 )

がん検診の効能と限界については良く知っている必要があります。特に有用なのは胃内視鏡検査(胃カメラ)と、便に血が混じっていないかどうかを見る(腸の病気を知る)便潜血検査です。
胃カメラと一般的に言われている胃内視鏡の利点はもし病変があった場合、その場で異常のある胃の粘膜の一部をつまんで顕微鏡検査(病理組織検査)ができることです。検査結果が出るのには1週間程度の時間がかかりますが、胃潰瘍などの原因となるピロリ菌やがんの有無を確認できます。バリウム検査はカメラを飲む必要がなく有用ではありますが、詳しく調べるためは再度胃カメラを施行しなくてはならず、二度手間です。
また、毎年となると放射線被爆量が若干問題になります。そうは言ってもカメラにも問題がないわけではありません。頻度は少ないのですが、管を中に入れるわけですから消化管を傷つけることがあります。また、他人が使ったものと同じカメラを飲むわけなので消毒するとはいっても、ウィルス肝炎などが感染する可能性がゼロではありません。ただし実際にカメラで感染したと言う報告はまだありません。
胸部レントゲンでは肺癌を見落とす可能性がありと申し上げましたが、これを解決すべく出てきたのが胸部CTによる肺がん検診です。これまでCTによる肺がん検診で1cm程度の肺がんの発見例が少なからずあり、早期発見、早期治療、再発予防という視点から新しい流れになっています。ただし毎年受けると被爆量の蓄積が多すぎるのではないかという先生もおられ、現時点では「帯に短し襷に長し」と言ったところでしょうか。
婦人科検診は通常の検診から外れていて区の検診として案内が届くようですが、実は婦人科検診は是非やるべきであると考えます。子宮頚部はヒトパピローマウィルスという感染症ががんを引き起こすことが知られており多産の女性に多いとされています。また、子宮体がんは女性ホルモンとの関係が指摘され、妊娠経験のない女性に発生しやすいがんです。どちらも症状がほとんどありませんが検診で見つかれば多くの場合、手遅れになることは少ないのでお勧めという訳です。
最近、がんが全身のどこかにないかとういう有料健康診断が流行で観光旅行を兼ねたツアーまで用意されているそうです。全身を調べて画像上異常がないかを探すことはそれなりに有意義ではあると思いますが、放射線被爆、費用、検査の限界などこれからまだまだ問題点を解決していく必要があり効果も未知数です。むしろ検査の結果を正しく理解して対応するための常識範囲の医学知識を持つこと、また適切なアドバイスをしてくれる良いかかりつけ医ないし相談できる医師を見つけることが大事でしょう。